カンヌ国際映画祭《監督週間》に選出された、世界最前線の映画を日本でいち早く鑑賞できる貴重な機会である「カンヌ監督週間in Tokio」。第3回目となる今年は、ヒューマントラストシネマ渋谷にて12月12日(金)から12月25日(木)までの開催。
今年5月、《監督週間》でのワールドプレミアから、日本歴代興収1位を更新するメガヒット作となった『国宝』。この度、12月16日(火)に行われた上映後のトークイベントに吉沢亮さん、横浜流星さん、そして李相日監督が登壇。フランスから来日中のジュリアン・レジ氏は三人との再会を喜び、ハグを交わす場面も。カンヌ上映時のことを振り返りつつ、この大ヒットの理由や制作当時の貴重なエピソードについて語りました。
下記、イベントの一部レポートをお届けします。

「カンヌ監督週間 in Tokio 2025」『国宝』トークイベント概要
日時:12月16日(火) 12 :30の回 上映後
場所:ヒューマントラストシネマ渋谷(東京都渋谷区渋谷1丁目23-16 ココチビル8F)
登壇者:吉沢亮(俳優)、横浜流星(俳優)、李相日(監督)、ジュリアン・レジ (「監督週間」アーティスティック・ディレクター)
司会:荘口彰久
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日本の実写映画で歴代1位の記録的大ヒットの熱がいまだ冷めやらぬ中、初日舞台挨拶以来に勢揃いとなるメインキャスト——吉沢亮、横浜流星、そして李相日監督の登壇とあって、この日のチケットは発売開始と同時にソールドアウト。3名が現れると、会場は大きな拍手に包まれた。現在発表のはじまった国内の映画賞もほぼ総なめ状態の同作だが、その快進撃の第一歩となったのはカンヌ国際映画祭の「監督週間」でのワールドプレミア上映。今回の「カンヌ監督週間 in Tokio 2025」の開催に対するコメントで「監督週間は高い作家性をもった芸術的な作品を常に支援してきましたが、『国宝』の興行的な成功は私たちにとっても大変喜ばしい結果となりました」と言葉を寄せていたレジ氏だが、イベントの冒頭で改めて本作を選出したポイントをこう明かした。

「まず、歴史的メロドラマであること。その昔はこのようなタイプの作品はよく作られていました。でも、近年、これだけ壮大なストーリーの原作小説を映画化する試みはだんだんと少なくなり稀になっています。まず、そこに(挑んでいる点に)非常に惹かれました。
それから、わたしは気に入った点が3つあります。
一つ目は、歌舞伎に関する映画と思っていると、いきなりヤクザの抗争が始まる。そこから始まり映画全体がアクション映画的で、まずそこがすばらしいと思いました。二つ目は、歌舞伎の映画と父と息子の関係性を描いている点。歌舞伎役者の父親、実の息子、養子の息子がいて。はじめ父親が自分の代役に養子の息子を指名したことから、悲しくも感動的なストーリーが展開していく。その父と子の関係性に興味を抱きました。そこに合わせるように歌舞伎の世界を忠実に描いている。わたしのような歌舞伎の世界になじみのない異国の人間がみてもそのすばらしさが伝わってくる。その点もすばらしいと思いました。そして3つ目は、李監督が『許されざる者』をはじめ数々のすばらしい作品を発表している、わたしの敬愛する監督であるということです」

続いて話はカンヌ国際映画祭の時のことへ。先で触れたようにカンヌでの上映は大盛況。上映が終わると、スタンディングオベーションが沸き起こった。このカンヌ体験を聞かれると、吉沢は「カンヌ映画祭は、映画人ならば誰もが憧れる場所でしたから、非常にうれしかったです。現地のみなさまが映画を見て、深く受けとめてくださったことが一番嬉しかったです」と語り、横浜も「俳優として憧れの地にこの作品で行けたことが非常に嬉しかったです。観客のみなさんと我々も一緒に見るというあの空気感はなんともいえないというか。作品に没頭したいのに、周りの反応が気になって……。ずっとそわそわしていたんですけど、ほんとうに観客のみなさんが作品に没入して終わったことがわかって。現地の方々に届いたんだなと思うとすごく胸が熱くなりました」と当時を振り返った。

次にレジ氏から、邦画実写映画興行収入を塗り替える歴代1位のヒットになった理由を問われると、吉沢と横浜はうまい答えが見つからず困った様子。
その中で、李監督は「最大の要因はとにかく(お客さんの)年齢層の幅が広いことだと思います。ほんとうに若い世代から、僕が聞いたとこ ろだと90代の方まで見てくださっている。歌舞伎の物語で、3時間もある映画で、当初はとりわけ若者には難しいんじゃないかという予想がありました。ただ、実際は多くの若い世代にも届いた。その理由は、もしかしたら10代、20代前半の方たちにとって、こういう映画体験が初めてだったのかもしれません。自分が若いころ、もう30年ぐらい前のことになりますけど、たとえば『さらば、わが愛/覇王別姫』や『ラストエンペラー』を見て、映画ってこういうものなのか、何かこう理屈を超えた映画の力を浴びるという経験をしました。それと同じような体験を若い世代はしてくれたんじゃないかと思いました。あとは二人(吉沢と横浜)の美しさ。この映画の力と(二人の)美の力でどうでしょうか」と吉沢と横浜に話を振ると、MCから「なかなか自分たちから“そうですね”と言いづらいですよね」とフォローが入るも、最後は二人で「じゃあ、我々の美しさですかね」(吉沢)「そうですかね」(横浜)と語り、会場から大きな拍手が起きた。

続いてレジ氏は李監督の厳しいと言われている演出について質問。実際に体験してみてどうだったかを聞かれると吉沢は「ふつうであれば『もう1回』となったら、ここはちょっとこうしてみようかと(改善点を)言ってくれる。でも、李監督は『もう一回』としか言わない。何がダメなのかを教えてくれない。これが李監督の厳しさでも あり、愛情でもあると現場で受けとめていましたけど、かなり絞られました(苦笑)」と明かすと、続けて横浜は「僕は今回、李監督の現場は2回目でしたけど、1回目は(吉沢と)同じでした。自分の中で答えを探すしかなくて、暗闇の中でもがいてもがいて必死に答えを探し続けていました。2回目の今回も同じなんですけど、自分が必死にもがいて答えを見つける時間をできる限り許してくれて、信じて待ってくれる監督はそういない。ですから、厳しいんですけど、幸せを感じています」と語った。

また、高い評価を受けている歌舞伎のシーンについて、どのような修練を積んで信憑性をもたせたのか聞かれると、吉沢は「子どものころから何十年と稽古を積んでいる本物の歌舞伎役者さんになるのは不可能と途中でわかっちゃった」と語ると、横浜も同意。「ひたすら1年以上の期間、稽古を重ねて、本物の役者さんたちの映像もたくさん見て、どうにかでした」と語り、二人の発言から相当な苦労があったことが垣間見えた。
最後にレジ氏からディレクターズ・カット版の用意が問われると、カットになっている歌舞伎のシーンがいっぱいあるとのことで吉沢と横浜としては「見てみたい、でも、きっと監督が一番いいところを使っていると思うから、恥を晒すのも嫌かも」とちょっと複雑 な心境をそれぞれに吐露。それに対して李監督は「なにごともピークがある。そのピークをたとえば(今の3時間から)4時間にしたときに保てるかどうか。それは難しいんじゃないか」と見解を示したが、期待高まる客席は静かな熱気に包まれたままイベントは幕を閉じた。

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